モンゴル人と赤い食べ物

モンゴル人と赤い食べ物

モンゴル人と赤い食べ物

以前、「白い食べ物」について記事を書きましたが、伝統的にモンゴルでは「白い食べ物」と「赤い食べ物」といって大きく分類していました。遊牧民ならではの食事を改めて書いていきたいと思います。

赤い食べ物(Махан хоол)

モンゴルでは肉類を「Махан хоол(マフンホール)」と呼称しています。日本語に訳すと一般的には「赤い食べ物」と呼ばれます。ただし、直訳すると実は「肉の食事」という意味だそうです。なぜ「赤い食べ物」と訳するようになったのかはわかりませんが、「白い食べ物」との対比が重要という判断だったのではと思います。

この「赤い食べ物」はモンゴルの五畜(馬、羊、山羊、牛、駱駝)の肉全てが含まれています。日本で肉といえば、価格順に鶏肉、豚肉、牛肉が一般的だと思いますが、モンゴルでは豚肉と鶏肉はあまり食べられていません。最も多く食べられているのは牛肉で、次点で羊肉です。元々は羊のほうが多かったとも言われていますが、現代においては牛肉が多くなっていると言われています。

基本的な調理法は「塩ゆで」です。骨付きのまま茹でて、ナイフで切り分けてかぶり付いて食べるのが多く、個人的にはこの食べ方が美味しいとも思っています。骨についた細かい肉もナイフを使ってきれいに食べるので、見ていて気持ちがいいです。都会っ子で育ってしまった筆者は、これがうまくできず、もどかしい思いをしていますが。いつかきれいに食べてみせると、人知れず決意しております。

羊の解体

モンゴル人にとって羊は馬とともに特別な家畜のようで、屠殺するさいも決して血を血に流してはならないと言われています。そこで、屠殺の方法も特別です。

まず、暴れたりしないよう足を紐で縛ります。

次にお腹に切れ目をいれて、そこから手を入れていきます。もちろんこのときに皮膚だけをうまく切って、血は流しません。そして、心臓の血管(もしくは神経?)を指で切って命を断つのです。この一連の作業をなるべく早く、苦しませず、怖がらせずやるのが大事だといいます。ここでもたついたり、痛い思いを羊にさせると緊張で体が固くなり、そのまま死んでしまうと肉が固くなるといいます。

実際屠殺するところを見せてもらいましたが、一切の鳴き声を出すこともなく静かに息を引き取る羊の姿をみてある種の感動を覚えるほどでした。肉を食べるということは、命をいただくということ。このことを実感させてもらいました。いただくものだからこそ、命を断つ瞬間をなるべく穏やかに行うモンゴル人の姿はすごいと思いました。